淺沼組名古屋支店がWELL認証GOLDを取得 環境に寄り添いながら、健康で快適なオフィス空間をつくる

淺沼組が取り組む、「人間にも地球にも良い循環を生む」環境配慮型のリニューアル。
2021年9月に竣工したGOOD CYCLE BUILDING 001淺沼組名古屋支店改修プロジェクトは、築30年のビルの躯体を活用し、後から加える素材はできるだけ自然素材を用いて改修しました。
淺沼組は、人が暮らす環境から地球環境まで、総合的に環境のことを考えながらリニューアル事業に取り組み、自然の力と人の創造力を掛け合わせた独自技術で、自然物と人工物のより良い循環を生み出すことを目指しています。

健康経営オフィスの推奨、働き方改革、コロナ禍によるリモートワークの推進など、近年のオフィスのあり方は変容しています。
今回は、淺沼組名古屋支店でのオフィスのウェルネス化事例について、「環境に寄り添いながら、健康で快適なオフィス空間をつくる」取り組みについてご紹介します。

Speaker

  • 淺沼組名古屋支店建築部兼設計部 課長(設備担当)

    坂野 秀之

    大阪工業大学電気工学科卒業後、淺沼組入社。淺沼組名古屋支店改修では設備設計として基本計画段階から参画。WELL認証、ZEB取得に携わる。

    坂野 秀之
  • 淺沼組本社社長室技術研究所 調査研究グループ 課長

    松井 亮夫

    一級建築士。博士(工学)。CCB工法協会会長。京都大学大学院博士課程修了。日本コンクリート工学協会賞、建築業協会賞(宮内庁正倉院事務所、京都大学稲盛財団記念館)など受賞多数。

    松井 亮夫
  • 大阪公立大学健康科学イノベーションセンター
    センター副所長 特任准教授

    水野 敬

    博士(医学)。理化学研究所ユニットリーダー、日本疲労学会理事、子どもウェルネス創出事業化コンソーシアム座長。著書「疲労と回復の科学」、「おいしく食べて疲れをとる」など。

    水野 敬

WELL認証とは

2022年7月28日付けで、淺沼組名古屋支店は米国の健康建築性能評価制度 「WELL Building Standard TM 」でGOLDを取得しました。築30年以上のオフィスビル全体の改修において、WELL認証のGOLDを取得したのは日本初となります。


WELL認証とは、建物の環境やエネルギーだけでなく、人々の健康とウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に良好であること)に影響を与えるさまざまな機能をパフォーマンスベースで測定・評価・認証する評価システムです。

設計、建設、運用のベストプラクティスと、エビデンスに基づいた医学的および科学的研究を組み合わせ、人の健康とウェルビーイングをサポートする建築や街区の環境を評価します。

評価コンセプトは、「空気・水・食物・光・運動・温熱快適性・音・材料・こころ・コミュニティ・イノベーション」に分かれ、点数形式で、コンセプトごとに必須項目・加点項目が細かくあります。
そして、その獲得点数によって、認証レベルが「プラチナ・ ゴールド・ シルバー・ブロンズ」の4種類に分かれます。
加点項目の点数が40~49点の場合はブロンズ、50~59点の場合はシルバー、60~79点の場合はゴールド、80~110点の場合はプラチナとなります。
設計図面での評価に加え、検査員が現場に赴いて検証し、空気質・水質・光や音などの環境の測定や、各種チェック・サンプリングをして評価が行われました。

名古屋支店におけるWELL認証取得の取り組み

名古屋支店でのWELL認証取得について、具体的には以下のような取り組みを行いました。

  • 土や木などの自然素材および植物を身近にふんだんに取り入れるとともに、自然通風・自然採光が容易になるように設計した。 
執務室エリア
1〜8階までベランダをつくり、自然の風や光、緑を感じる明るい空間に。
  • 執務室には、リモート会議に対応できる一人用の静寂スペースを設けた。
静寂スペースの中にある静寂ルーム。コロナ禍においてオンラインMTGの際にも対応。
  • 執務デスク上では、PC画面の高さや角度を各自で調整できるようにし、手元の明るさ・送風を各人で調整できる器具を用意した。また、執務デスクは健康促進のために昇降機能をもつものとした。
  • 2台あったエレベーターを1台に削減することで省エネを図るとともに、屋内階段を 「昇りたくなる階段」としてデザインし、職員の健康増進につながる仕組みとした。
エレベーターの1機を停止し、扉のスペースを本棚に改修(竣工時写真)
「昇りたくなる階段」のデザイン① 各階に違うコピーのサインが入っている
「昇りたくなる階段」のデザイン② 階段の壁に線を辿っていくと、自然界の中で今どのくらいの位置にあるのかを感じるコピーが入っている。
「昇りたくなる階段」のデザイン③ 階層を表すサインには、フロアごとに特徴となる素材の来歴を示している。

省エネと快適性のバランスを取り、「ZEB」と「WELL」の2つの認証を取得する

淺沼組名古屋支店では、WELL認証の取得とともに、省エネルギーの性能評価「ZEB Ready」の認証を取得し、建物の省エネも実現しながら、建物の快適性も生み出すことを目指しました。

ZEBとWELL認証の取り組みを進めた淺沼組名古屋支店建築部兼設計部課長 坂野秀之は2つの認証取得に取り組んだことについてこのように話します。

「建物をつくる上で、どんな建物でも快適性というのはもちろん重要なことなのですが、今回取り組んだことで、何が快適性かと細分化して考える良いきっかけとなりました」

「ZEBとWELLの両方の取得を目指すことで、快適性と省エネが必ずしも同じ方向を向いていないので、そこのバランスを取ることに一番苦労しました。
WELLの項目を一つ一つチェックして、どこを加点項目として取り入れるかを考えながら、一方で、ZEBの省エネのシミュレーションを行い、両方を実現することを目指しました」

「人間にも自然にも良い循環を生むことを目指した改修では、建物の環境性能の向上・省エネ化と、健康増進・ウェルネス化の両立が可能であることを示すことができたと考えています」(坂野)

建築とウェルビーイングの関係性を明らかにする

そして現在は、自然素材や植栽を多用した空間が人の健康にどのような効果があるのかを医学的に検証するため、淺沼組技術研究所は大阪公立大学健康科学イノベーションセンターと共同研究を進めています。

大阪公立大学健康科学イノベーションセンターの水野敬さんは淺沼組名古屋支店における健康調査について、このように話します。

「内装にたくさんの自然素材を活用して改修した名古屋支店で働く人たちに対して、心理生理学的な疲労度評価系を用いた臨床研究を行い、労働環境空間と抗疲労・健康増進効果の関連性について検証研究をしています。
「健康科学」は一つのブームになっていますが、実は根拠が定かでないものや体系立っていないものなど、非常に混乱があります。
オフィスビルの環境空間を高めることで労働生産性を高め、癒し、疲労蓄積を防ぎ、健康増進を促すという名古屋支店の取り組みが、これからの建築とウェルビーイングのあり方について一つの道筋を示すことになればと思います」(水野さん)

名古屋支店の引っ越し前後に健康調査を行い、認知機能テストを実施。また、同時期に引っ越しを行った九州支店でも同様の健康調査を行い、比較検証する。

健康調査を行う淺沼組技術研究所の調査研究グループ松井亮夫は、「建物をつくって終わりではなく、今後さらに健康的に生活し続けていくにはどのような運用ができるのかまで、提案の幅を広げていきたいと思います」と話します。

淺沼組技術研究所 今井琢海(左)松井亮夫(右)

「健康科学の分野は、これまで淺沼組にとっては未知の分野でした。自然素材をふんだんに内装材として活用した名古屋支店における社員の健康調査の分析結果を見ると、一定の効果が出始めているように感じます。
名古屋支店では、自然素材をふんだんに使っているだけでなく、内装材に採用した吉野の森に入って環境音を採集し、ハイレゾのスピーカーを使ってオフィスで流しています。
実際に早朝、山の中に入った時の清々しさや空気感を肌で感じました。工業製品に囲まれた中で自然音を流すのでは、環境と音がそぐわず、かえって違和感を覚えてしまう。名古屋支店のような自然素材を多く使った空間で、自然音を流すことで人はより心地よさを感じることができるように思います。
この取り組みは、様々な地域の山林で行うことができます。運用後も、自然と人をつなげる取り組みを行うことで、建物で過ごす人の環境に対する意識が少しずつ変わっていくような気がします。
建築だけでなく、空間全体の環境としてウェルビーイングに取り組み、今後さらに展開していきたいと思っています。また、今回の調査結果を生かし、建設現場事務所の環境を整えていくなど、当社における働く環境の改善にも取り入れていきたいと思います」(松井)

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